Maurice Dupont 工房レポート
ジプシージャズの聖地、フランスはパリの郊外にあるサモア(Samois-Sur-Seine)で四日間のライブを堪能した後、セルマー/マカフェリギター製作では最も有名なビルダーの一人、Maurice Dupontの工房へお邪魔しました。
工房のあるCognacはパリから車でおよそ5時間位南下した所に位置し、あの有名なコニャック HennesyやCamusなどを生産している町とは思えない程小さな町で、ちょっと町を外れると広大なぶどう畑が広がるとてものどかな所でした。
この時期は日が暮れるのが夜10時くらいで、地中海性気候なのか非常にカラッとした天気で過ごしやすく、お酒作りだけではなく、楽器作りにも非常に適した環境であり、日本で言うとちょうど長野県辺りのような所でしょうか。こんな環境で仕事が出来るなんてうらやましい限り。
写真1:工房内の風景

案内してくれたのはMauriceの奥さんであるHelene。工房は2階建てになっており、2階部分がギター製作、1階が塗装、乾燥ブースになっていました。10人程度の職人達がそれぞれ担当を持って作業しており、日本ではあまり紹介されていないフラットトップやストラトなどのエレキギター、アーチトップまで手がけるフランスでは珍しい"総合楽器工房"といった佇まいです。その中でもラインの中心はやはりセルマー/マカフェリタイプのギターで、たくさんのボディが仕上がりを待っています。

写真2:仕上がり待ちのボディ&ネック。強烈な数です!
写真3:オーバルホール用のトップ
写真4:力木接着中。この辺りはどこの工房も同じですね。
写真5:Dホールのトップ。オーバルモデルとの力木の違いが分かるでしょうか。
写真6:力木の最終仕上げ。
いくつもの本で紹介されている様に、Maurice自身オリジナルセルマーの修理等を経て工房をスタートさせているので、さまざまなオリジナルセルマーの残骸が…。写真は当店で注文しているマカフェリタイプのハーブギターの原型となるオリジナルハープギターのトップ!かつて2本程メンテをした事があるようで、このトップはMauriceの手によりリトップされ、今や貴重な資料になっています。もちろんオーバルホールのトップもありました。
写真7:オリジナルマカフェリハープギターのトップの残骸。何度も割れをリペアされた後、トップ張り替えになっちゃいました。
写真8:メンテをした当時の記録写真。オーバルホール、Dホール含めてこういった資料がたくさんありました。
写真9:セルマーのトップの残骸。これも割れをリペアしまくった跡が数カ所。
写真10:綺麗なコア材。これがDホールのウクレレに。
写真11:彼がマカフェリギター担当のギー(Guy)氏。男前です。
1階に降りると塗装待ち、乾燥待ちのセルマー/マカフェリタイプがいっぱい!これらがフランスはもとより、世界各地に出荷されて行きます。あいにく日本国内向けは一本もありませんでした。
写真12:これから塗装されるギターたち。意外にマホガニーサイド&バックのギターが多いですね。
写真13:乾燥待ちのギター。ストラトもあり(笑)。
メインの工房を後にし、Mauriceに先導され向かったのは車で約5分の所にあるDRブランドのテールピースやセルマーのレプリカチューナーStimerのピックアップを製作している工房(と言っても個人宅でしたけど)にお邪魔しました。周りは全てぶどう畑、犬2匹となぜかロバがいる大変のどかなお宅です。
工房の主、Jean Michel氏は趣味で時計の修理をやったり、子供の為に手回しオルガン等を自作、またテールピースやチューナー等を製作する工作機械まで作っちゃう変人。工場内部は最新鋭の機械がずらり…なんていう風景には程遠い、ビンテージルックな工作機械がなんともオオゲサに並んでいます。工具や機械好きな私にとっては悲鳴を上げんばかりの楽しい空間でした。
写真14:これ、なんだか分かります?実はテールピースの弦を引っ掛けるフックです。
写真15:テールピースの形をした台座。ここで真鍮板をプレスします。
写真16:プレスの機械
写真17:このマークがテールピースの真ん中にプレスされます。
写真18:ペグのブッシュを削り出す工作機械。なんともおおげさです。
写真19:ピックアップカバーに入るStimerのロゴを掘る機械。セルマーもこの機械でヘッドロゴを彫っていました。
一通り見学させてもらった後、工房兼Jeanの自宅の庭でPineau(ピノー。グレープジュースとコニャックで作ったデザートワイン)で乾杯。もちろんこのお酒もJean氏のお手製(笑)。

メイン工房に戻りMauriceにご両親が作るコニャックとピノーをお土産にもらい、Dupontがフランス国内のディーラーをやっているマカフェリ用弦(ドイツ製)のサンプルを数セット頂き、工房を後にしました。ブランド名はPYRAMID、帰国後使ってみましたが、これがなかなか音のバランスも良く、今後当店でも取り扱う予定(9月上旬入荷予定)。

セルマー/マカフェリタイプのギターを作るビルダーの多くは個人工房で、ここまでの大きな規模でやっている所は世界的に見てもありません。また、ギターに使用されるパーツ、ピックアップなどの周辺パーツの殆どが自社製で、そういったパーツを積極的に開発するという事もMaurice本人のセルマー/マカフェリに対する意気込みをヒシヒシと感じる今回の訪問でした。

写真20:工房の前で。
Mauriceと奥さんのHelene
写真21:工房の川を挟んだ向かいにある私たちの泊まったビンテージなホテル。かつてRomaneなども泊まった事があるそうです。
写真22:ホテルの窓からの眺め
後記:Dupontの工房のあるコニャックは、今回のフランス訪問で個人的に一番気に入った町でした。日程がかなりタイトだったので、ビンテージな佇まいのこじんまりとした町を十分に見て回れなかったのが残念。次回はもう少しゆとりを持った日程で訪れてみたいところです。ただ、難点はパリから非常に遠い!それがなければなぁ…。でもまた行きますよ、もう少しフランス語を勉強して…。

次回はオランダのEimers工房のレポートをお届けします。現在鋭意作成中!